【お酒】2322.春日諸白 180ml

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製造者 奈良豊澤酒造株式会社
奈良市今市町405

純米酒
品目 清酒
アルコール分 14度
原材料名 米(国産)、米麹(国産米)
精米歩合 75%
内容量 180ml
(以上、ラベルより転記)




奈良豊澤酒造さんが造ったお酒。
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これまでに、以下の物をいただいております。
【お酒】5.豊祝カップ 上撰
【お酒】168.純米吟醸 貴仙寿 吉兆 カップ
【お酒】247.豊祝 純米吟醸 カップ
【お酒】1360.黒松貴仙寿 純米酒 カップ
【お酒】2317.貴仙寿吉兆 純米吟醸酒 180ml


今日いただくこのお酒は、春日大社の御神酒。
それ故に、箱には、春日大社が販売元として記されておりました。
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その名は、
“春日諸白”
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“春日(かすが)”ってのは、春日大社を指す言葉でしょうね。

では、“諸白”ってのはいったい?

そうです!
ここからしばらくの間、講釈が続くのですよ。


“諸白(もろはく)”という言葉には、狭義広義とがございます。

狭義としては、
掛米にも麹米にも、白米(精白したお米)を使用したお酒という意味です。

掛米(かけまい)というのは、清酒の主原料として麹菌を付けずに使用するお米のこと。
そして麹米は読んで字のごとく、麹菌を付けたお米のこと。
品質表示のうち、原材料名の最初に出て来る“米(国産)”というのが掛米で、次に書いてある“米麹(国産米)”が麹米です。
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そして、室町時代以前は麹米には玄米を、掛米には白米をそれぞれ使っていたそうですが、酒造技術が進むにつれて、双方とも白米を使用するお酒が登場するようになったのだとか。

このことについて、文献には以下の記述がございました。

室町時代頃までは,こうじは玄米を用いて造られていたようで,掛米には白米を用いるようになっていたと思われる.室町時代に入ってこうじ米も掛米も白米を用いるようになったが,酒造りの技法も悪く酸味の多い酒となったらしい.永禄時代(1560年頃),二段仕込みから三段仕込法に酒造りの技法が変わり,酸味の少ない酒が,こうじも掛米も白米を用いて造られるようになって,これを諸白と称していた.江戸初期には,こうじに玄米,掛米に白米を用いたものを片白と称し、その両方に白米を用いたものを諸白と称していた.」(※1)

なお、(※1)の末尾から、諸白の対義語として“片白(かたはく)”があるものの、それは江戸期以降に出て来た言葉であって、室町時代に諸白が登場した時点ではまだ存在していなかったことがわかります。


では、広義では、いったいどのような意味なのでしょうか?

それは、
中世から江戸期にかけて、奈良で造られていた良質なお酒
という意味。

このことについては、以下の記載をお読みいただければわかるはずです。

 諸白とは、現在の日本酒と同様に麴米、掛米とも精白米を使って造る酒のことで、十六世紀の中頃に奈良興福寺で初めて造られたとされている。文明十年(1478)から元和四年(1618)までの一四〇年間、同寺の塔頭・多聞院の僧英俊らによって記された『多聞院日記』は、中世の日本酒造りの様子を伝える貴重な文献の一つだが、一六世紀半ば以降になると、「諸白一瓶」とか「一荷モロハク」など、諸白という字が頻出するようになる。これが諸白の文献上の初見である。」(※2)

 ところで同寺は、麴米、掛米の双方に精白米を使用したばかりでなく、仕込方法も改良している。同日記によると、この時期、天野山金剛寺の「天野酒」と同じ二段掛け仕込みも行なわれていたが、それと並行して、現在の仕込み法である三段掛けによる仕込みも始められていた。諸白が造られる以前から同寺では、生酛系の酒母造りの基本的技術も確立されており(末寺・正暦寺の「菩提泉」)、同寺での諸白造りは、現在の酒造りの基本を完成させた技術革新の場であったと位置づけられる。また、仕込みの大型化も、この時代酒造りの大きな変化だ。永禄十年(1567)における同寺での諸白造りの仕込み容器は、容量約三石の酒甕が用いられていたが、天正十年(1582)には一〇石ほどの大型の酒桶の記載が出てくる。
 このように、奈良興福寺の諸塔頭と末寺では時代の先端をいくさまざまな酒造技術が開発されていたが、同寺大乗院の末寺・正暦寺で造られた諸白はとくに「南都諸白」(「南都」は奈良の意味)と呼ばれ、高い評価を受けていた。」(※3)


今日いただくこのお酒の銘“春日諸白”は、“南都諸白”にあやかって名付けられたものでしょう。
このことは、箱に記載されている能書きからもわかります。
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それではいただきましょう。

まずはひや(常温)でちょっとだけ試してみます。
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香りはなし。

うまみは淡めですが、淡めなりにしっかりしています。
米のうまみは厚みはないものの、舌の上にふわりと乗っかります。
軽い苦みをかすかに感じ、酒臭さ(ほめ言葉です)もかすかにわかります。
キレがよく、アル添酒のような透明感を少し感じます。

酸味はひかえめ。
ほとんど感じません。
スーもピリもなし。

甘みはややひかえめ。
かなり弱めですが、一応わかります。


ひや(常温)だと、淡麗スッキリやや辛口のお酒でした。
かなり軽くてキレがよく、味わいと口当たりとがアル添酒のようでした。
それ故に、飲みやすいと思います。


次に、残りを燗にしてみました。
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酸味が立つね!
すっぱさは立つがそれほどでもないものの、酸味の深みを少し感じます。
うまみは淡めのままですが、酸味の深みといい感じに相俟ってひやよりもわかりやすくなりますね。
ただ、苦みが少し立つみたいです。
甘みもそのまま、かつキレがよい。


燗にすると、淡麗ちょい苦ちょいすっぱちょい深スッキリ旨やや辛口のおいしいお酒になりました。

これはまちがいなく燗がいい!
ひやよりも飲み応えと深みとが増すようです。
それでいてキレのよさはそのままで、しつこさを感じません。

うまいね。
“諸白”を名乗るだけのことはありますね。


(※1)灘酒研究会編『改訂 灘の酒 用語集』p.363(1997.10 灘酒研究会)
(※2)小泉武夫監修『日本酒百味百題』p.16(2000.4 柴田書店)(ふりがなは省略しました)
(※3)(※2)p.17(ふりがなは省略しました)

この記事へのコメント

  • HOTCOOL

    勉強になります!
    2025年03月13日 04:03
  • さる1号

    “諸白”、気になるなぁ
    飲んでみたいな^^
    2025年03月13日 05:38
  • Rinko

    ナイス!
    2025年03月13日 06:59
  • lamer-88

    正に日本酒博士!!!
    2025年03月13日 10:41
  • ma2ma2

    Niceです!
    2025年03月13日 12:21
  • tochi

    こんにちは
    春日大社が販売であれば、ご利益ありそうですね
    2025年03月13日 13:08
  • newton

    nice!です。
    2025年03月13日 17:44
  • hana2025

    相変わらずお酒の事はわからないのですけど、「春日諸白」の書体に品があると感じましたら、春日大社のお神酒でしたか!通りで納得致しました。
    2025年03月13日 18:01
  • ヨッシーパパ

    春日大社の周りは、鹿だらけですから、ラベルが覚えやすいですね。
    2025年03月13日 18:40
  • kame

    足跡にて失礼します。
    2025年03月13日 19:32
  • てんてん

    こんばんは。
    今日も来ましたよ♪
    2025年03月13日 20:34
  • skekhtehuacso

    HOTCOOLさん、あまり信用なさらないほうがよろしいかも。
    2025年03月13日 21:29
  • skekhtehuacso

    さる1号さん、春日大社へ行かれたらお求めになられてみて下さい。
    2025年03月13日 21:30
  • skekhtehuacso

    lamer-88さん、いいえ!
    ただのアル中ハイマー型ダメ人間です。
    2025年03月13日 21:31
  • skekhtehuacso

    tochiさん、あるとよいですが、その気配はいっこうにございませんですわ。
    2025年03月13日 21:32
  • skekhtehuacso

    hana2025さん、私もわからんことばかりです。
    というか、大事なことはみな、酒が教えてくれるのです。
    2025年03月13日 21:33
  • skekhtehuacso

    ヨッシーパパさん、おそろしいほどいますね。
    ということは、マダニやヤマビルも・・・。
    2025年03月13日 21:34
  • Boss365

    こんにちは。
    「諸白」の「狭義と広義」なる程で、勉強になります(すぐ忘れますが・・・)
    また「南都諸白」から「春日諸白」みたいですが・・・
    文字や響としては「春日諸白」の方が好感触です。
    色々知ると、お酒の味わいにも影響しそうです!?(=^・ェ・^=)
    2025年03月13日 21:56