●製造者:月桂冠株式会社+F
京都市伏見区南浜町247
●品目:日本酒
●内容量:180ml
●アルコール分:14度以上15度未満
●原材料名:米(国産)、米こうじ(国産米)、醸造アルコール
●冷やしてお早めにお飲みください。
(瓶の印刷事項より転記)
月桂冠さんのお酒は、これまでに以下の物をいただいております。
【お酒】388.389.月桂冠 上撰キャップエース&純米酒 お酒の中で、あいましょ。
【お酒】1515.月桂冠 旨口200 カップ
【お酒】1562.月桂冠 THE SHOT 本醸造 艶めくリッチ 180ml
【お酒】1563.月桂冠 THE SHOT 大吟醸 華やぐドライ 180ml
【お酒】1564.月桂冠 山田錦 辛口 純米 カップ
【お酒】1769.月桂冠 THE SHOT 爽やかホワイト うすにごり 180ml
【お酒】2250.月桂冠カップ300(ファミリーマート限定オリジナルパッケージ)
【お酒】2284.月桂冠 THE SHOT 上撰生詰 芳醇クラシック 180ml
このほかに、ノンアル商品もいただいておりました。
今日いただくこのお酒は、生酒。
すなわち、「製成後、一切加熱処理をしない清酒」(※1)です。
それ故に、
“●冷やしてお早めにお飲みください。”
って書いてありますね。
生酒、すなわち「製成後一切加熱処理をしないで製造場から移出する清酒」には、「保存又は飲用上の注意事項を表示する。」(※2)とあり、「「保存又は飲用上の注意事項」の表示とは、「要冷蔵」、「冷蔵庫に保管してください。」、「冷やしてお早めにお飲みください。」等の消費者及び流通業者の注意を喚起するための表示をいう。」(※3)と定められています。
でもね、この生酒。
常温で販売されていたのでした!
上記の規定は、
生酒を常温で流通させることで残存酵素や雑菌による変質・腐敗が生じることを考慮し、「消費者及び流通業者の注意を喚起するため」(※3)のもの。
一方で月桂冠さんの生酒は、
常温で流通させることが可能な生酒
なのだそうです。
このことについて、手元にあった文献では以下のように紹介されておりました。
「昭和五六年(一九八一)、月桂冠は一切加熱処理なしの生原酒を保冷流通を条件に地域を限定して発売、同六〇年には業界で初めて常温流通可能の本格的な生酒を全国一斉に発売した。
これを可能にした技術、超精密沪過技術、無菌充填システムの開発などと相まって、全工程無菌化に対する取り組みが必要であった。
その成果は、日本酒業界の発展に大きく貢献するものとして高く評価され、同六一年、日本醸造協会・石川弥八郎賞を受けた。」(※4)
ただし、
月桂冠さんのWebsiteでは、
生酒の賞味期限は製造年月から約8ヶ月に設定している旨の記述がございました。
“約”が付く賞味期限というところに、いささかあいまいさを感じてしまいますけれど。
ところで、生酒が変質する原因には、
残存酵素の活性による“甘ダレ”とともに、
火入れしないことに起因する雑菌の繁殖
があると思われます。
前者は酒自体に内在する要因であることから、限外ろ過(「膜フィルターの細孔径が0.2μmより細かい範囲をいう.(中略)分画分子量30,000程度で蛋白質等の高分子物質を分離できるので,生酒の酵素を除去し,“生ひねしない”酒にすることができるといわれ,生酒の処理に利用されている.(※5)」)などの超精密沪過技術による残存酵素の除去を講じることで対応したのでしょう。
ただしろ過も行き過ぎると、お酒の風味を構成する成分までをも除去しかねません。
なお、火入れしたお酒のろ過については、その功罪をかつてこちらでまとめております。
一方後者への対策は清酒内に雑菌が侵入することを防止する必要があることから、充填時のみならず全工程を無菌化することを選択なさったのではないでしょうか。
おいおい、
無菌化っていうけれど、麹菌までもは無菌化できんだろ!
とお思いの諸兄もいらっしゃるかと存じます。
これは私の予想ですけれど、この点には、
月桂冠さんお得意の液化仕込法である“融米造り”が絡んでくるんではないでしょうか?
「 液化仕込みとは,白米と仕込水を液化装置に投入し,昇温しながら耐熱性液化酵素により米澱粉の液化を図り,液化終了後,冷却して発酵タンクに仕込み,こうじ,酵母を加えて通常通り発酵を行わせる醸造法である。
液化仕込を白米の破砕・液化の方式から区分すると
①白米をあらかじめ破砕した後,短時間で液化適温まで加温して液化する方法,
②白米を粒のまま液化槽に投入し,時間をかけて緩やかに加温しながら酵素剤を加え,液化を行う方法(姫飯(ヒメイイ)仕込み,等),
③浸漬,水切り後の白米を摩砕し,耐熱性液化酵素と混合し、短時間に加熱して液化を行う方法(融米方式),
などがある.」(※6)
また、液化仕込みについては、
「 液化後に仕込むので,もろみに少量のグルコアミラーゼ剤を添加することによって麴歩合の少ない仕込みが可能であり,手間のかかる製麴工程の軽減をはかり,最近の嗜好に合った低アミノ酸で軽快な酒質の清酒を製成できる.
また掛米の洗米,浸漬,蒸米工程が省略され,仕込水投入,白米投入,昇温液化,冷却,仕込みまでの一連の工程が自動化でき,原料処理および仕込工程にほとんど労力を必要としない.」(※7)
とありました。
それ故、麹の使用量が少ないので、雑菌を徹底的に滅菌した麹を利用し、かつ自動化された閉鎖的環境の下で仕込むことができることから、無菌化が可能なのではなかろうか?と思います。
液化仕込み全般や姫飯造りについては、それぞれかつて触れたことがございました。
しかし月桂冠方式ともいうべき“融米造り”についてはまだまとめておりません。
近いうちにまとめる必要があると思っておりますので、その時までお待ちください。
お待たせいたしました。
それではいただきましょう。
生酒ですし、冷やして飲めと書いてありましたので、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。
お酒の色は、無色透明でした。
上立ち香はなし。
含んでもフレッシュな風味はわかりにくいというか、あるのかな?
うまみは淡めというよりも、薄め。
米の風味をうっすらと感じます。
酒臭さゼロ、熟成感も皆無。
軽い苦みがあって、鋭さを少し感じます。
キレはとてもよく、あっという間に消え去ります。
酸味はややひかえめ。
すっぱさはわかるものの、これもかなり弱め。
スーかすか、ピリなし。
甘みはややひかえめ、いや、ひかえめ?
幅はなく、かつ前に出て来ません。
でもうまみが淡いせいか、かすかにわかります。
超淡麗ちょい苦スッキリやや辛口のお酒でした。
うまみをかなり薄く感じました。
そのせいで、それほどはっきりしていない苦みや酸味も、感じたのかもしれません。
ただうまみだけでなく、生酒の風味も飛んでしまっているように感じました。
液化仕込みのお酒は比較的澄んだ味わいになりやすいことはわかっていたつもりですけれど、それを限外ろ過すると、どうやら私にはちょっと物足りなく感じてしまうみたいでした。
まあでも、個性がない味わいであるが故に、繊細な味付けが施された京都の上品な料理の味を引き立ててくれるのではないでしょうか。
ただし、クセなくスイスイと行けてしまうので、飲みすぎに要注意でしょう。
(※1)清酒の製法品質表示基準(平成元年11月22日国税庁告示第8号)5(5)
(※2)(※1)3(2)
(※3)酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達第86条の6 酒類の表示の基準2(3)ロ
(※4)月桂冠株式会社社史編集委員会発行『月桂冠 三五〇年の歩み』p.181(1987.10 月桂冠株式会社)
(※5)灘酒研究会編『改訂 灘の酒 用語集』p.165(1997.10 灘酒研究会)
(※6)(※5)p.76
(※7)深谷伊和男『清酒の液化仕込みについて』p.222(日本醸造協会誌第83巻第4号 p.218-222 1988.4)
この記事へのコメント
kame
HOTCOOL
kou
kontenten
それに、約8ヵ月も消費期限でなく賞味期限ですからね(^^)
加熱でなく、フィルターで濾過・・・或る意味、生ビールと
同じ扱いなのかも知れませんね(-_-)
tochi
生酒は美味しいですね
月桂冠はよく見ますね
リュカ
確かにクセがなくすいすいイケちゃうお酒は飲みすぎてヤバイです(笑)
Boss365
生酒ですが「製成後、一切加熱処理をしない清酒」なる程です。「常温で流通させることが可能な生酒」で「約8ヶ月」は、曖昧さあり、ちょい心配になります。それでも大手の設備ある会社が表示されているので、それなりの実験?実証はされていそうですね!?(=^・ェ・^=)
ma2ma2
てんてん
skekhtehuacso
HOTCOOLさん
kouさん
ma2ma2さん
てんてんさん
どうも!
skekhtehuacso
たしかにそうかも。
skekhtehuacso
skekhtehuacso
それ故に、女の子に飲ませたら「水みたいでおいし~♡」とかぬかしやがるかも。
だったら水飲んでいりゃいいだろ!って言いたいけれど、言えません罠。
skekhtehuacso
ヨッシーパパ
インバウンドが無くなったら、京都に行きたいです。
川鮎くん
skekhtehuacso