【お酒】2287.夜明け前 生貯蔵酒 300ml

60138.JPG
製造者 株式会社小野酒造店
長野県上伊那郡辰野町大字小野992

日本酒
アルコール分14度
米(国産)・米麹(国産米)醸造アルコール
内容量300ml
(以上、ラベルより転記)




小野酒造店さんは、辰野町小野の蔵元。
60139.JPG

小野酒造店さんは、小野駅(辰野駅から塩尻側へ2駅目)の近くに蔵を構えているようです。
辰野駅や小野駅がある中央本線の旧線は、かつては大幹線たる中央本線の一部として特急や急行が走っておりました。
しかしそれは、岡谷駅からいったん南下して辰野駅へ向かい、そこから再び北上して塩尻駅へ向かうという冗長な線形(いわゆる大八廻り)でした。
そこで、1983年(昭和58年)に塩嶺トンネルが開通して岡谷-塩尻間が東西一直線に短絡されると、岡谷-辰野-塩尻間は支線扱いとなってしまいました。
さらに飯田線からの乗り入れがない辰野-塩尻間(小野駅を含む)は、短編成の普通電車が数本走るだけの超閑散区間となってしまったのでした。

今日いただくこのお酒は、“夜明け前”。
60140.JPG

夜明け前は、言わずと知れた島崎藤村が書いた小説の題名。
なんでも、「藤村の嫡男で初代藤村記念館理事長、故島崎楠雄先生より『夜明け前』を使用する許可をいただきました。『この名を使う以上は、命に代えても本物を追究する精神をお忘れなく』との約束を守り、酒を愛する人々へ、本当に美味い、本物の『酒』を造る。それが私どもの使命です」と蔵人は語る。」(※1)

ところで、“夜明け前”と言えば、冒頭の「木曽路はすべて山の中である。」が有名ですね。
藤村自身も、馬籠生まれとのことですし。
でも小野どころか辰野町は木曽地方ではなくて、伊那地方(上伊那郡)。
それなのに、どうして“夜明け前”を銘にしたのでしょうか?

このことについて、関わると思われる記述がございました。
 旧街道の町並みを残す小野宿は、江戸時代の初めは中山道の宿場町だった。しかし、幕府内部の政争により十数年使われただけで現在の塩尻駅付近を通るルートに変更された。小野宿を通るルートは「初期中山道」と呼ばれる。」(※2)
ただし、「初期中山道(1601~1614)三州街道の宿場町」(※1)とあるように、小野宿は、中山道から外されたあとも信濃から三河へ至る三州街道(伊那街道)の宿場町として存在し続けたようです。

すなわち、小野は、江戸初期の十数年間だけ、中山道で木曽へ向かう際の入口としての役割を果たしたこともあったってことね。


それにしても、
小野・辰野は、
塩嶺トンネル開業によって中央本線の幹線ルートから疎外された
のみならず、
江戸時代にも中山道から外されていた
のですね。

そんな大幹線から2度も外されるという憂き目を見て来た辰野町の小野地区。
そこに蔵を置く小野酒造店さんの“夜明け前”を、今日はいただきますよ。


今日いただくこのお酒は、普通酒(特定名称の表示がないお酒)の生貯蔵酒
60141.JPG

話のネタが切れたところで、いただきましょう。
生貯蔵酒ですから、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。

お酒の色は、無色透明でした。
60142.JPG


盃に鼻を近づけると、フレッシュな風味をフワリと感じます。
含むとそれが広がりますが、それとともにラムネのような香りもかすかに感じます。

うまみはやや濃いめでしょう。
米のうまみに厚みを少し感じ、どっしりしています。
苦みがあって、少し強めで鋭さを感じます。
酒臭さはなし、熟成感もなし。
キレはよいですね。

さんみはややひかえめ。
すっぱさはかなり弱め。
でも酸味自体の深みを少し感じます。
ちょいスーですが、ピリはなし。

甘みはややはっきりでしょう。
かなりサラリとしていますが、それでも幅を少し感じます。


爽快やや濃醇でちょい苦ちょい深ちょいスー旨やや甘口のおいしいお酒でした。

生貯らしいフレッシュな風味とラムネっぽい風味をかすかに感じるのとで、爽やかでした。
米のうまみがどっしりしておりましたが、酒臭さや熟成感がないので飲みやすく感じました。
ちょい苦でしたが突出することはなく、しっかりしたうまみと釣り合っているようでした。
ちょい深は乳酸でしょうか?、でもきっと速醸酛でしょうけれど。
甘みはじんわりと効いていて、しつこさを感じませんでした。

爽快でしっかりしつつも飲みやすく味の要素のバランスがよい冷酒。
これは濃い味付けをした山の物に合うように感じました。





その夜明け前生貯蔵酒と合わせた今日のエサはこちら。


もやし、キャベツ、ちくわ。
60143.JPG

ごま酢和え。
60144.JPG

いりごまとすりごまとを併用したことで、ごまの風味が香りとしても味としてもしっかり感じられるようになりました。
60145.JPG

豚ロース肉(アメリカ産)としょうがとで、生姜焼きを作る魂胆なのですが、
60146.JPG

あたしゃしょうがはすりおろさずに、賽の目に刻んで使います。
60147.JPG
60148.JPG

アメリカ産豚肉は中途半端に焼くと固いけれど、焦げ目が着くまで焼けばホロっと崩れるような食感になりますね。
その肉と共にしょうがの粒を噛むと、しょうがの香りが口の中で弾けるのでした。
60149.JPG

ごちそうさまでした。
60150.JPG


(※1)『ようこそ日本酒の國へ』p.074(2014.5改訂 合同会社デザインファームアンドリゾート)
(※2)朝日新聞長野総局編著『信州の日本酒と人』p.172-173(2018.10 川辺書林)

この記事へのコメント

  • hana2024

    「夜明け前」は、島崎藤村の書いた小説名なので覚えやすいですね。本品は多分呑んでいると思います。
    新幹線開通による新ルート、また幹線ルートから外れて交通網の遅れから寂れてしまう町の例、これまでも限りなくあると考えられます。道路にせよ、鉄道にせよ、つながりがあるって大切ですね。
    そうした悪しき例が見られるのは、北海道であり。また先の大地震で被災した能登地方であるかと思います。
    skekhtehuacsoさんのように、その土地のお酒を呑んで、その良さを知らせるって、素晴らしいではありませんか!
    2024年11月16日 21:19
  • skekhtehuacso

    hana2024さん、能登は以前は鉄道が半島の先まで続いていましたが、高速道路に完敗して撤退を余儀なくされましたね。
    北海道は赤字で廃止され、骨だけになってしまいましたが、その残った骨すら赤字とは厳しいかぎりです。
    新幹線は長距離利用にはよいかもしれませんが、地元の人が短距離で利用することは不可能でしょうから、鉄道を地域の暮らしから離してしまいますね。
    かと言って、新幹線駅の設置で市勢が逆転した三島市と沼津市との例もあり、難しい所だと思います。

    いかんいかん。
    難しいことを考えると、酔いが冷めちまうぜ。
    2024年11月17日 19:28