●製造者:西野金陵株式会社+T
香川県仲多度郡琴平町623番地
●品目:日本酒
●内容量:180ml
●原材料名:米(国産)、米こうじ(国産米)
●原料米:オオセト(香川県産)100% 精米歩合:58%
●アルコール分:14度以上15度未満
(以上、缶の印刷事項より転記)
西野金陵さんのお酒は、これまでに以下の物をいただいております。
【お酒】105.金陵 本醸造 ハンディグラス180ml
【お酒】596.金陵 超辛口 カップ
【お酒】756.金陵 マイルドカップ
【お酒】917.金陵 ハンディグラス・L200
【お酒】920.金陵 上撰 お燗瓶 180ml
【お酒】2247.金陵 淡麗辛口 生貯蔵酒 180ml
今日いただくこのお酒は、純米吟醸。
“日本酒水族缶 せとのあお”だってさ。
品質表示はこちら。
香川県産の“オオセト”なるお米を100%使用しているんだってさ。
え?
“オオセト”って?
どんな米なのかって?

オオセトについて文献にあたってみたところ、
以下のことがわかりました。
オオセトは、「昭和41年農林省中国農業試験場において奈系212(農林22号×藤坂5号)を母として関東77号(後のコチカゼ)を父とし,人工交配を行い,(中略)昭和54年より農林257号,品種名を「オオセト」として登録され,香川県で奨励品種として採用されて普及に移されることとなった。」(※1)というお米とのこと。
昭和41(1966)年からはじめて昭和54(1979)年に品種登録って、育成に13年もかかったお米だったのですね。
それに香川県で奨励品種に指定されて以来、今日まで40年以上も使用されているということは、香川県での酒造りにかなり好適であるという証でしょう。
なお、お米の父(花粉親)・母(種子親)については、こちらをご参照下さい。
“オオセト”の名は、「瀬戸内地方に広く適する大粒品種の意」(※2)なのだとか。
そしてこのオオセトは、酒造好適米として育成されたものではなく、「炊飯用と酒造原料用の兼用種として育成されたもの」(※3)なのだそうです。
その経緯については、ここでは割愛。
しかもこのオオセト、(※2)にもあるとおり、「玄米の粒型は中で粒大はかなり大きく」(※1)なる一方で、「心白の発生はほとんどない。」(※1)のだとか。
「心白とは、米の主成分であるデンプンの組織が軟らかく、密度が薄くなって、白く結晶したように見える部分をいう。米の中心部が軟らかいと、麹菌が繁殖する際に奥まで菌糸を伸ばして、しっかりした麹を造ることができる。つまり、心白のある米の方が糖化力のある良い麹が造りやすい。」(※4)と言われていることから、麹を造る麹米には欠かせない特性であると、一般的には言われております。。
一方で、「オオセトは,玄米に心白の発生はわずかで,いわゆるもと米としては適していないが,かなり大粒であることから,かけ米としての用途が考えられ,その適性について期待がもたれた.(中略)オオセトは,白米の吸水率がやや低く吸水時間をやや長く必要とし,また,蒸米の吸水率もやや低く消化性はやや低いが,他の特性も含め,醸造原料米としてほとんど問題がないと判定された.」(※5)そうです。
なお、(※5)には“もと米”とありますが、麹米は酛(もと:酒母ともいう)を造る原料ともなることから、おそらく麹米と同義で使用しているものと推察いたします(しかし正確には、もと米は“酛を造るときに加える麹菌の付いていない米”という意味でしょう)。
また“かけ米”とは、麹と酛(酒母)とともに「蒸し後放冷して直接もろみに仕込まれる米」(※6)のことで、造りに使われるお米全量のうち、「全量の約70%を占め」(※6)るお米です。
さらにオオセトは「白米の粗蛋白含量が少なく」(※7)とのこと。
「日本酒に含まれるアミノ酸のほとんどは,原料米のタンパク質が分解されて生じたものです。適量でバランスがよければ旨みや味わいとなりますが,多すぎると雑味となってしまいます。酒造では,タンパク質が多いと吸水性が低下し,酵素による蒸米の消化が悪くなることがあります。(中略)このため酒米は,低タンパク・低脂質がよいとされます。」(※8)とあるとおり、この点も醸造用のお米として向いているところなのでしょう。
でもでもでも、
今日いただくこの“せとのあお”は、オオセト100%使用!
ということは、かけ米のみならず、もと米、そして麹米にもオオセトを使用しているということでしょうな。
察するに、オオセトが育成された20世紀の頃と比べて、今日では酒造技術が格段に進んでいることでしょう。
それ故、たとえ心白が少ないオオセトであっても、もと米や麹米として利用することが技術的に可能となったのではないでしょうか?
そんなことを考えつつ、いただいてみたいと思います。
純米吟醸ですから、冷蔵庫で冷やしたものをいただきます。
お酒の色は、無色透明でした。
上立ち香はなし。
含むと、フレッシュな風味を少し感じるのみ。
うまみはやや淡めですが、しっかりしています。
米のうまみに淡めなりに厚みを感じます。
吟醸酒にありがちな苦みがあって、鋭いというよりも少し重い。
熟成感はなく、酒臭さもなし。
キレはよく、スッと引きます。
酸味はややはっきり。
すっぱさが少し強めで鋭さも少し。
ちょいスーですがピリはなし。
甘みは、ややひかえめ、否、ちょいはっきり(だと思う)。
幅はなくサラリとしており、かつ弱めではあるものの、おし味(酒類を飲み込んだ後,または吐き出した後に感じる味をいう.あと味にごく味があってしっかりした感じの場合におし味があるといい,(以下略)(※9))の如くじんわりと感じます。
ちょい爽快のやや淡麗でちょい重ちょいすっぱちょいスースッキリ旨口のおいしいお酒でした。
爽やかさ少しあって、やや淡麗で口当たりはよい感じ。
それをちょい重の苦みと酸味とが引き締める。
でもキレがよくてスッキリしており、かつ弱めながらも甘みが味を和らげているようでした。
これはうまいね。
味の要素がやや複雑ながらも、いい感じにまとまっているようでした。
ただ、オイラはどちらかというと甘みに敏感すぎる傾向があることから、人によってはやや辛口に感じることもあるかもしれません。
伊吹島産のいりこをかじりながらいただいてみたかったところでございました。
(※1)篠田治躬『水稲新品種「オオセト」の解説』p.503(農業技術 34巻11号 p.503-504 1979.11 農業技術協會)
(※2)『オオセト(品種解説シリーズ)』p.46(稲の新品種:水稲昭和54~62年度陸稲昭和40~62年度 p.45-51 1989.3 農林水産技術情報協会)
(※3)篠田治躬・藤井啓史・鳥山国士・関沢邦雄・山本隆一・小川紹文・坂本敏『水稲新品種「オオセト」の育成について』p,1(中国農業試験場報告.A.作物部 p,1-18 1980.3 農林省中国農業試験場)
(※4)松崎晴雄『日本酒をまるごと楽しむ!』p.54(2007.1 新風舎)
(※5)(※3)p.13
(※6)灘酒研究会編『改訂 灘の酒 用語集』p.43(1997.10 灘酒研究会)
(※7)(※1)p.504
(※8)副島顕子『酒米ハンドブック 改訂版』p.5(2017.7 文一総合出版)
(※9)(※6)p.269
この記事へのコメント
あとりえSAKANA
≪大人の水族缶≫とはシャレが効いてますね☆
HOTCOOL
newton
hana2024
舌の肥えた四国のお酒なので、書かれた内容にも納得です。
今月、新潟の麒麟山へ行くのですが、お勧めの日本酒、その他にもなにかありますか?ご意見を下さいな♪
skekhtehuacso
空港内の売店で見つけたとき、金陵にもこんなしゃれたものがあったと驚きました。
skekhtehuacso
なにせ、酔っぱらいながら書いているわけですから。
skekhtehuacso
7月の香川旅では、悦凱陣にはまったく出会うことはございませんでしたよ。そもそも少量瓶の設定がないのかも。
さしずめ、香川県の十四代ってところでしょうか?
skekhtehuacso
麒麟山、hana2024さんは津川にある蔵まで行かれるのですね。
私もかつて津川へは磐越西線に乗って行き、阿賀野川にかかる麒麟橋の上から麒麟山を拝んだことがございました。
私の少ない経験では、麒麟山シリーズでは、一番安い伝統辛口(伝辛)が一番おいしいと感じております。
しかし私が津川を訪問したのは2016年7月ですし、その後、いろいろと新しいお酒が発売されているみたいですから、もっとおいしいお酒があるのかもしれません。